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アニメ「けものフレンズ」のすゝめ

毎日のようにネットニュースに名前が出てくるかと思えば、音楽番組にアニメ発の声優ユニットが出演したりと話題の多いアニメ、けものフレンズ

放送こそ3月で終わったのですが、他のアニメの広報がツイートで「フレンズ」という単語を使ったり、コラボ商品が登場したり、かなり広範囲に名前が広がっているようです。
それは、男性向けの美少女アニメに全く興味のない私の家族でさえ、その存在を知っているほど。
アニメに若干詳しいとはいえ、そこまでその名前が広がっている作品となっています。

さて、そんなアニメ「けものフレンズ」ですが、アニメファンならずとも、アニメに詳しくない人にもお勧めしたい作品となっています。

けものフレンズ」とは

さて、このアニメがネット界隈でムーブメントを巻き起こした頃にブログを書いていました。
kyoukaze.hatenablog.com

こちらでも触れていますが、アニメ「けものフレンズ」はけものフレンズプロジェクトのうちの一つのコンテンツです。

けものフレンズプロジェクト

プロジェクトとしては、ゲームアプリを最初の軸として、それに派生したコミカライズ作品、そして派生したアニメ作品で成り立っていました。
いえ、成り立っていたというのは語弊がありまして、成り立っているはずでした

プロジェクト全体を通して、「フレンズ」の代名詞である擬人化された動物たちの「アニマルガール」のデザインを、「ケロロ軍曹」などでお馴染みの吉崎観音先生(通称「よしざきおにいさん」)が手掛け、可愛らしい女の子たちが登場するのですが…。
擬人化という概念こそ、プロジェクトが始まった時期には既に様々なところであっていました。
それこそ、テレビアニメは若干やらかしてしまったというイメージが強い「艦隊これくしょん」など、元が無機物というか構造物でさえ、擬人化される世の中です。
そんな中、けものフレンズプロジェクトは簡単に受け入れ…られたわけではありませんでした。
と、言うのも、ケモノ趣味という世界もありまして、「ケモナー」と呼ばれるファンの方々も存在しています。
ケモノとなると、ケモ耳といった動物の耳や、もっふもふの毛並みというイメージが強いのです。(これは私の偏見でもありますが…)
どうやら、当時は「中途半端なケモノ感」が一部の層の反感を買ったようです。

そんな中ですが、ゲームアプリは2015年3月に開始されました。
運営はネットゲーム界隈では名のある会社、ネクソン
…個人的なところ、この時点で若干ヤバそうなイメージはします。
アプリ自体のボリュームは濃厚だったようで、知名度こそ低いもののファンはいたようです。
開始時点ではアイテム課金制と、ソーシャルゲームアプリでは一般的なシステムでした。

そして、一年後に完全無料化されました。
「あ、これヤバいやつだ」
と思っていた人ももしかしたらいたのかとしれませんが、結局他の媒体での展開、特にアニメ開始を待たずアプリは2016年12月に配信終了。
アニメ開始後も残っていれば…と考えると非常に惜しいのですが、むしろこれが後の奇跡を生むことになるのですが…。

二つ目の媒体となった漫画版は2015年5月より連載開始となりました。
可愛らしい絵の作品は、プロジェクトの参画企業の一つ、KADOKAWAの雑誌「月刊少年エース」での連載。
雑誌としては、吉崎観音先生の「ケロロ軍曹」と同じ雑誌となりました。
割とこの雑誌、コミカライズは多いのでやりやすい環境だったのではないかと思います。

ただ、やっぱり知名度に難があったようです。
結果、2017年の2月に最終2巻を発売して漫画版は幕を閉じることになりました。
一年半の連載ですから、かなり奮闘したことは間違いないのですが…。

そして、プロジェクトの多くが縮小していく中、最後の一つの媒体が幕を開くのでした。

敗戦処理のアニメ化

まさに、見出しのような感じでした。
アニメ化こそ2016年に発表されたのですが、開始までにゲームアプリは終了。
漫画もブーム直前に連載の最終回、さらに触れていませんでしたがウェブラジオは毎週から隔週配信に縮小と完璧に畳にいく展開でした。
そんな中始まったアニメ初回は上記のブログ記事でも触れたとおり、視聴者を蹴り落としにかかるようなもの。
実際に所謂「一話切り」をさせるほどでした。
初回あたりの評判は間違いなく一部のコアな層に取ってはハマっていく作品ではありましたが…
二話移行の不穏な気配など、地道に視聴者の心をつかみ始めていきます。

そして、2月の上旬、運命の歯車が回り始めます。

衝撃の流行、そして伝説へ

そのブームは突然起こりました。
元々、じわじわと広がりを見せていた「けもフレ語録」とも呼ばれる「すごーい!」「わーい!」「たーのしー!」と言った台詞。
本編で使われていたこともあり、その汎用性の高さからそのフレーズは使われていたのですが、そもそも知名度は低い状態。
そんな中の第4話で登場したツチノコの「ヒトが絶滅している」というニュアンスの発言に深い考察が広まったのも契機の一つでしょう。
「可愛いキャラが出てくるけど不穏なものがある」というアニメは今までにもありました。
最たる例は六年前の同じ冬アニメであった「魔法少女まどか☆マギカ」ですが、こちらは脚本で最初から警戒されていたので若干条件は違うかもしれません。

この頃から着実とアニメの評判も広まり始めました。
そして、3月に入り終盤を迎えた頃、11話でおとずれた展開に騒然となり、その後のニコニコ生放送では、その前から不調であった生放送プレイヤーに多くの人が訪れることに。
前半をあまりみれない人が続出し、翌日に再放送が行われました。
その更に翌日には、11話までの一挙放送。そこで一挙放送のコメントランキングを大幅に塗り替えるコメント数を記録。
そして、最終回の地上波放送の視聴率を、関東で1パーセントを超えるなどの記録を残したことは記憶に新しいことです。
その後の話は、ネットニュースでも数多く触れられていますのでここでは触れないでおきましょう。

さて、メディアミックスも不調であったけものフレンズプロジェクト、アニメでここまで挽回したわけですが、それほどアニメに魅力があったとも言えます。
まだ作品にふれていないみなさんには是非見ていただきたいのですが、せっかくなのでアニメ「けものフレンズ」について紹介したいと思います。

恵まれたアニメーション製作スタッフ

このアニメは3DCGで作られています。
そう言うこともあり、若干取っ付きづらい面もありますが、製作体制に恵まれていたことが大きいと思っています。
製作はヤオヨロズ。
監督はたつきさん、そして脚本は田辺さんといった布陣です。
製作は予算など大人の事情の兼ね合いもあり、少人数となっていましたが、それよりも特に特筆すべきなのはirodoriという存在でしょう。

全ての始まりはirodoriだった

このirodoriというのは、元々自主制作アニメーションをインターネットでの公開を中心に行っていたグループです。
この中心で監督を勤めていたのがたつきさんなのですが、その名前は知る人ぞ知ると言った具合で、ほぼこの数週間で知られるようになるまではマイナーな存在でした。

ニコニコ動画で、毎月何かしらアニメーションの動画を公開していくスタイルで、一つの作品ができるとDVDで販売していくという流れで活動されていました。
どのタイミングで、なのかは分かりませんがある時このirodoriの存在を知り、イベントでスカウトをしたのが後にヤオヨロズ作品でたつきさんと共に歩む福原P。
この当時の時点で、CGを使ったアニメーションの企画自体はとある知り合いの放送作家と考えていたようで、後にその放送作家が監督を務めるアニメのプロデューサーとなり、そこでたつきさんをアニメーション監督として起用することになるのですが…。
それはまた別のお話、というか既にその話をしていますのでそちらをご覧ください。
kyoukaze.hatenablog.com

プレスコという特殊な形態で、通算3クールアニメーション監督を手掛けることになりました。
その頑張りをふまえ、ご褒美ということも兼ねてやってきたのが、けものフレンズという企画だったようです。

けものフレンズはirodoriのアニメ?

そして、どうなったかは先ほど触れたとおりです。
ところで、全般的に監督であったたつきさんの名前が良く出て来ますが、彼一人だけが関わっていたのでしょうか?

それを紐解いたのが、先日発売された「コンプティーク」等でのインタビュー。
アニメのスタッフの中で、他の関係者は敬称付きだったものの、特定の2人だけ呼び捨てであったということです。
更に語っていたことから推察するに、おそらくスタッフ内のアニメーション関係はirodoriのメンバーでは?という説が浮上しました。

後述する「12.1話」はirodori名義で投稿されており、それらを踏まえると、irodoriのアニメという見方も出来るのかもしれません。

スタッフのSNSでの活動をみると、全体的に作品を愛していることが分かります。
少人数だろうと、大手アニメーション製作会社に負けない熱意があった、それが作品にも表れた、と言ってもいいのかもしれません。

アニメ「けものフレンズ」は何故ウケたのか

スタッフに恵まれた、ということは話しましたが、それだけではここまでの勢いがつくはずがありません。
このアニメの中に、理由があるのです。

人を拒まない優しい世界

第1話から感じられるものなのですが、メインキャラのサーバルちゃんなどフレンズの前向きな言葉が、現代社会をいきる我々の心に染み渡ったのが理由の一つだと思っています。
前述の「すごーい!」「わーい!」「たーのしー!」と言った言葉、それだけなら若干浮いている感じはあるのですが、
アニメをみている限り本当に明るさを感じるのです。
前向きだと感じた一幕があります。
第4話では、さばくちほーという砂漠地帯に足を踏み入れるのですが、
ただ広い砂丘をみて私たちは「何もないなあ」と思うでしょう。そういう人の方が多いかと思います。
しかし、この時サーバルちゃんは「砂がたくさんある」と言います。
それを聞いて、すごくはっとしました。
マイナスな要素も、言い方を変えればプラスになるのです。
福祉の世界に相談支援というものがあるのですが、そこで必要とされるスキルに全くそれと同じものがあります。
プラスに受け止めることで、前向きな気持ちになれる、そういうところがあるのです。
更に、第1話で、「フレンズによって得意なことは違うから」といったことも言っています。
この言葉、後にけものフレンズに批判的なコメントや非難、はたまた蔑みの言葉を投げつける人に対してユーザーが使うのです。
「けものによって、好きなものはちがうから」と、その一言で相手を受容していく。かなり殺伐としているネットユーザーとは思えない懐の広さもここに表れています。
最後にOP曲の「ようこそジャパリパーク」では「けものはいてものけものはいない」というフレーズがあり、優しさに満ちた世界が垣間見えます。
…逆手にとって、ボボボーボ・ボーボボでのネタ「ただしつけものてめーはだめた」もあったりしますが…

二次創作の柔軟性

こういったコンテンツで一つの障壁となりうるのが二次創作の多さ。
こちらについては、プロジェクトとして前々から二次創作のガイドラインが定められており、かなり柔軟性に満ちたものになっています。
KADOKAWAも、自社の小説投稿サイト「カクヨム」でけものフレンズの二次創作カテゴリを設けており、公式が既に二次創作をやりやすい環境を作ろうとしていることから、ファンの創作が増え、活発になっていると言えます。

休まない監督

あるインタビュー記事で、福原Pが監督のたつきさんのことについて「5日は仕事でCGを作り、休みは趣味のCGを作る」と触れていました。
流石に「監督休んで」という声もあり、最終回のニコニコ生放送配信の後、「しばらく寝ます」といったツイートに多くのファンが胸をなで下ろしていました。

翌週の火曜日、アニメ終了を受け止めたくない一部のファンの中でエア実況を始めようとする人もいました。
そして、放送の時間を迎えエア実況…

…と思ったら、監督が趣味の動画を上げました。
ニュースにもなった「けものフレンズ12.1話 ばすてき」です。
投稿者の名義はirodori、自主制作アニメーションの一つという名目でしたが、内容はスピンオフといって過言でないクオリティ。
音楽も流れるどころから、声優も喋っているのです。
エア実況をしようとしていた人たちでさえ驚くプレゼントでした。
アニメの拠り所を失った人達の集まりを「難民キャンプ」と称しているのですが、事実上の公式からの提供に「難民グランドホテル」という謎の概念が誕生するほどの事態です。

あまりのクオリティに、「本編で削られた部分だろう」という説もありました。一方で、出演者のツイートから「新録」ではという声も挙がり、公式のフットワークに驚きの声があがりました。




違ったのです。

正真正銘の、自主制作だったのです。



翌週、監督本人から「12.2話はないですよ」というツイートがなされました。
公開により、続きの期待も大きかったこともあり、それに対してのものだったのですが、重要なのはその後でした。

「命と口座を燃やし続けるボケを続けるのもよかった」という文面…。
そう、つまり声優のギャラなど全て自腹説が噴出したのです。
これには多くの人たちが驚きを隠せませんでした。
一部のファンからは口座番号の公開や、Amazonの欲しいものリストの公開などをせがまれるリプライも。

むしろ、それだけいわれるほどの信頼があるとも言えます。というか、私も振り込みたいので早くirodoriでクラウドファウンディングを行って欲しいです。

スタッフに視聴者の愛が揃った、これらがここまで伸びた一因ではないかと思います。

BD付きガイドブックが手に入らない

深夜アニメは円盤と呼ばれるDVDやBDの販売で製作費の回収を行っています。
けものフレンズも同じなのですが、おそらく売れ行きが低調になると予測したのか(アプリや漫画を見れば慎重にならないはずがないのですが…)、ガイドブックをメインにした書籍での販売となりました。

その結果、第一巻は第3刷の予約も瞬殺する売れ行き。
どうやら他の冬クールのアニメの円盤では「このすばらしき世界に祝福を!」の2期と肩を並べるほど。
確かに「このすば」も、一年前の一期では前評判の低さからダークホースとして語られるほどになるアニメになったのですが、それと同じくらいの勢い。

…ではないのです。
というのも、そもそもDVDと書籍では色々計算も変わりますし、販売場所も変わります。
実はけものフレンズのガイドブック、カドカワストア分が反映されていないのです。
posという販売数を推察できる唯一の手段があるのですが、カドカワストアはこの対象外。加えてカドカワストアではさらに特典付きだったのです。
ちなみにカドカワストアでは売り切れ表示から全く変化がないのですが、Amazonでは新品の販売が定価より安くあります。

そう、こんなところにも転売屋がいるのですが、けものフレンズのファンは転売屋から全然買おうとしないということを徹底してる人が多く、定価割れせざるを得ないようなのです。
これは、ちょっと誇るべきだと思うのですがどうでしょうか。

そういうわけで、私も欲しいのですが手に入らない。 
ということは、これからけものフレンズを見てほしいみなさんの手元にも…?

しかし、ご安心ください。

ニコニコのパックが安い

ニコニコ動画では、現在パックでの有料動画を視聴が出来ます。
ほかのアニメと違い、明らかに安いのです。
有料話全てのパック(ファンからはジャパリパスなどと呼ばれています)でさえ、30日間で税抜き1540円。それで、無料の1話を加えて全て見ることが出来るのです。

因みに、この有料動画、ニコニコ動画では初の「公開時から有料の動画で初の10万再生」を記録したものがあります。
それくらい視聴されているものなのです。




アニメ「けものフレンズ」はテレビ放送こそ終わりましたが、新作映像の制作も決まっていますし、アニメの反響を踏まえ、アニメが終わってからタイアップの企画なども登場しています。
「アニメをあまり見ない」人、
「女性向けアニメはよく見る」人、
「女の子しか出ないアニメはちょっと…」という人、
色々いると思います。
そんな皆さんも試しに見てはいかがでしょうか。

このアニメに、のけものはいません。

視聴して、やっぱり合わないと思ったとしても、「好きなものはちがうから」咎まれる必要もありません。

そんなに警戒して見るようなものではないのです。
ただ、私としては皆さんにみてもらって楽しんでもらえればという気持ちだけです。
ですから、気楽に触れてもらえればいいのかな、と思います。

 







余談ですが、ガイドブック的にも放送局的にものけものにされてるからTVQさん、放送を検討してください!!